2010-03-23

トリビューン紙パート4(下)

今回は、前回の続きで(下)です。
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"子どもが心配だ"

ダナンの汚染が旧空軍基地にだけに限定されているわけではない。科学者も除草剤のダイオキシンが近くのセン湖にしみ込んだことも分かった。その湖では、何十年と、住民たちは魚を売り買いしてきた。

魚や沈殿物のダイオキシン濃度が非常に高いために、ベトナム政府は湖での釣りや水泳を禁止した他、湖周辺に住む家族を移動させた。ベトナム政府は、さらに、汚染地区をコンクリートで封鎖したほか、住民が立ち入らないように、湖周辺に壁を建設した。にもかかわらず、現場に取材に行った報道関係者が、湖で釣りをしている10代の若者に遭遇した。

10年以上もの間、ファム・ティ・クックさん(74)は、ダナン空港西の美しい湖で、蓮の花を栽培し、漁業を営んできた。ハットフィールド社の調査で湖の沈殿物のダイオキシン濃度が世界的な安全基準よりおよそ40倍高いことが示されると、彼女の仕事は2007年に禁止された。

クックさんから採血された血液は、WHO標準より50倍以上も高く、ヴェトナムでこれまでに計測された中では最高濃度のダイオキシンの部類に入る。彼女の子供たちは、母親と一緒に湖で仕事をし、汚染された魚をたくさん摂取しており、血液中のダイオキシン濃度は高い。

子ども達は一人も病気になってはいないが、クックさん血液検査以来10ポンドも痩せた。それは、ダイオキシンが子供たちや孫にどういう影響を及ぼすか、不安にさいなまれているからだ。

種々の調査は、ダイオキシン曝露がガンや他の疾病の危険性を高めることを示してきた。しかし、体にその影響が現れるまでに数十年かかることもある。また、曝露した人々の中には、疾病の影響が出てこない人もいる。科学者は、ダイオキシンが細胞の発達を崩壊させ、人のDNAすら変更することができると思っている。

2006年に、アメリカ環境保護庁は、空港とセン湖でのダイオキシンを除去するカネのかからない方法を見つけるために、ベトナム側とアメリカの個人的な慈善財団(特にはフォード財団だが)による努力に対する貢献方法として技術協力を提供し始めた。去年10月には、アメリカ国際開発庁は最も、汚染地区の最上の浄化方法を研究するとして、140万ドルの契約に調印した。同庁では、研究に3年かかると言っている。

しかし、そんなことで、すでに心の傷を負っているクックさんの恐怖を緩和することにはならない。
「私は、子供たちと孫についての健康問題を払拭できない。私はもう年をとっているので、自分の健康は心配しない。でも、子ども、孫の心配はするよ」と、クックさんは言った。

アメリカ議会が割り当てたお金は、南ヴェトナム中で点在する他の汚染地区は言うまでもなく、ダナン地区の浄化作業でもはるかに不足している。

昨年の6月に発表されたアメリカ議会調査局の報告書は、ダナン空港の浄化費用を約1700万ドルと見積もったが、ベトナム側の見積もりは、3箇所の重度汚染地区の浄化には、約6000万ドルかかると見積もった。

ヴェトナム総環境局のレ・ケ・ソン次長は言う。「我々双方は、考えていることを自由に発言するために門戸を開いた。アメリカ政府がすべてのことをすることができないということは知っている。しかし、彼らが起きてしまったことの対して、ヴェトナムに一種の同情を示すべきだと私は思う」と。



“汚染された魚やアヒル”

ダナンの汚染地区を封鎖したことは、そこでの状況を改善したようにみえる。しかし、旧サイゴンで、現在ホーチミン市ビエン・ホアの北20マイルにある産業都市ビエン・ホアで同じ事をすることは、はるかに困難だ。

戦争中、アメリカ軍は何百万ガロンという除草剤を、ヴェトナム最大の空軍基地ビエン・ホアに貯蔵した。1970年だけでも、7,500ガロン以上の除草剤が意図せずだが、こぼしている。

米越双方の科学者は、同基地の土壌や沈殿物には国際的許容基準の1,000倍以上高いダイオキシン濃度を測定した。それは、ベトナムで測定された過去最高のレベルである。

汚染された地域からのダイオキシンは、近くの川や、何千もの住人が利用する大きな公園内のビエン・ホア市中央に位置する湖にしみ込んでいった。
何十年も、漁師は、ビエン・フン湖から獲れる魚、カタツムリ、カエルとカモを、地元住民に売ってきた。ダイオキシンは脂肪細胞が好きだ。そして、科学者は、住民が脂肪分に高水準の毒が入っている魚やアヒルを食べれば、人体に影響がでると仮定している。

昨年、ドンナイ省政府は、湖周辺の2つの村で取れるカタツムリ、魚、チキン、カモ、エビとカエルなど特定食品を禁止した。

枯れ葉剤関連の健康問題支援のため、フォード財団はおよそ650万ドルの補助金を提供したが、そのお金で、ドンナイ省保健当局は、汚染地域周辺で食糧を消費する危険性を説明するため9,000部のパンフレットを印刷した。

しかし、ドンナイ市の人口はおよそ750,000人。そして、一部の家族にとっては、それはあまりにも小さな知らせであり、あまりにも遅きに失したものだ。

グエン・ティ・トンさん(56)は、ビエン・ホア空港からの汚染にさらされた小川のそばで、生涯を過ごしてきた。彼女の父は12年間肝がんと闘病している。そして、彼女の妹は30才になる前に直腸ガンで死んだ。トンさん自身も、肝臓の病気に苦しめられている、と言っている。

「この川の両側の多くの人たちが、30歳とか40歳才周辺で死んでいった。彼らの多くが肝臓癌のためだ-それが一番の理由だ」と、彼女は言った。

ドンナイ省保健当局によると、ビエン・ホアは、今日、人口100,000人当たりおよそ1,333人の癌患者がいて、ベトナム全国で最高の癌発生率をみせているという。当局はまた、ヴェトナムの保健医療制度が遅れているために、多くの癌患者は一度も診断されることなく死んていくと言っている。(パート4完 つづく) Posted by Picasa

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