2010-03-17

トリビューン紙パート4(上)

基地は枯れ葉剤に汚染されたまま。
解決可能な問題に早く手を打て

【ダナン発】トリビューン紙調査のパート4では空気がヴェトナムにおける旧アメリカ軍基地が、枯れ葉剤で高度に汚染されたままであるが、アメリカは戦争中に汚染した基地の清浄にほとんど何もしていなかったことを伝える。
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しかし、(アメリカが何もしなかった)結果は、発癌性有毒ダイオキシンの濃度は、米環境保護庁が住宅地に定めたガイドラインよりはるかに大きい数字を示したのだ。


それは、現在環境調査会社社長になっているボアヴァン氏が、「ユーレカモーメントを得た」と言った時だ。(北村註:ユーレカ・モーメントとは、何かを発見し、「やった」という瞬間のこと)


バンクーバーに本社を置くハットフィールド・コンサルタント社は、近隣の池の土壌と沈殿物から、カモや魚の脂肪、さらに汚染地域に住む村民の血液と母乳に至るまで、食物連鎖を通して毒素の追跡を始めた。


ある女性の母乳は、WHO(世界保健機構)が安全基準としているものより6倍も高いダイオキシン濃度だったことが、研究から分かった。その母親の2歳になる子は、米復員軍人省が米国の復員兵士の子供たちに補償する先天性欠損症のうちの1つであるスピナビフィダ(脊椎披裂)になっている。


それ以来、ハットフィールド社とベトナム科学者は、旧南ベトナムに点在するほぼ3,000の旧米軍基地からサンプルを採取してきた。ダナン、ビエンホアとフーカットの3大重度汚染地区を含む28の「汚染地区」を特定した。


彼らの調査結果は、解決可能な ― 且つ、緊急の ― 問題としてヴェトナムにおけるエージェント・オレンジの遺産を計算しなおす方法を提案した。未だに続く汚染を発見したことは、先天性欠損症や他の複雑な健康障害問題をめぐる醜い論争をやめて、計測可能な現代の問題に焦点をあてることになった。


2000年に最初のハットフィールド社調査が発表されて以来、汚染に関連した深刻な健康問題と枯れ葉剤に起因する重要な環境被害への取り組みとしてちょうど600万ドルを提供したが、アメリカ政府はベトナム戦争中にアメリカ軍が汚染した場所の浄化作業の協力については何もしなかった。


問題に取り組んだボアヴァン氏らグループは、最初の研究が始まった時から、より多くの協力が米越間で行われたと言う。ハットフィールド社はカナダ政府助成金の負担を希望して、ヴェトナムで無料奉仕で作業を始めた。しかし、同社は後に、この問題を専従で調査することになり、相当な時間と人材を提供した。


「特にここ数年、アメリカとベトナムの両国に大きな動きがあった。(現場を)見ることが、非常な励みになるということだ」と、ボアヴァン氏は言った。


それでも、ヴェトナム国内の汚染された旧アメリカ軍基地に対するにアメリカの全体的な行動のペースは、遅かった。ヴェトナムとアメリカの当局は正確なコスト予想で意見が合わなかった。しかし、ヴェトナム戦争時代の汚染地区の浄化作業の費用は、何千万ドルにも達することは確かだ。


「ヴェトナムに有害なダイオキシン濃度があるということは疑問の余地がない。そして、ベトナムで、それを貯蔵していたアメリカ軍と南ベトナム軍に原因と結果があるということも疑いない。アメリカがこの問題に対処しなければならないとするのは、比較的簡単な議論だ」と言うのは、2004年から2007年まで駐ヴェトナム大使を務めたマイケル・マリン氏だ。


エージェント・オレンジ衝撃という目に見えない脅威は、直接撒布された兵士や一般民間人だけが感じているわけではない。エージェント・オレンジが貯蔵されたり ―漏洩していた ―基地内や基地周辺では、この化学物質の衝撃に永続性があるのだ。

ダナンの汚染地区を警備するベトナム軍兵士(上)。戦争中、この空軍基地に何百万ガロンの除草剤が貯蔵された。30年以上経た今も、土壌は安全基準を超えるレベルのダイオキシンを含んでいる。汚染も近くの湖に広がり、食物連鎖を通して、人の血液と母乳に入っていく。

グエン・ヴァン・ズンが1996年にダナン空港で下水道の清掃を引き受けたとき、彼は米軍がベトナム戦争中に数十万ガロンの除草剤をそこに貯蔵していたことも、それらの除草剤が12以上の疾病と関連がある高度の有毒合成物を含有したということも知らなかった。彼は、毒素が土壌にしみこみ、危険な高いレベルでそこに残留していることも知らなかった。


ズンは、妻のトゥー、健康な幼い娘と一緒に、旧米軍基地(ダナンのこと)の隣に、シンダーブロック(セメントと石炭を混ぜて造った中空の建築用ブロック)で出来た一部屋の家に引っ越した。次の13年間、ズンとトゥーは空港で働いたが、2人の子供は、汚染に起因したと思う血液と骨の珍しい疾患を含む悲惨な病気に見舞われたが、二人は空港の汚染でそうなったと疑っている。


2番目の娘は、7歳で死んだ。そして、いま、10ヵ月の息子は同じ病気を患っており、毎月、生きていくためには、痛みを伴う輸血を必要としている。


「私は男だから、めったに泣くことは市内」と、41歳のズンは言ったが、妻のトゥが元気の無い乳児を膝に抱えると、彼は自宅の床に胡坐をかいて座りながら、目には涙があふれていた。「でも、息子が輸血を受けるたびに、私は泣けてくるんです」


過去3年間、ハットフィールド社とベトナムの科学者は、ダナン空港で労働者の血液と母乳に含まれるダイオキシン濃度を測定してきたが、WHO安全基準より100倍も高いものであった。


ダイオキシンは、知られている毒素の中で最も持続的な毒素と考えられている。環境中においては、その半減期は数十年と言うことがありうる。ということは、化学汚染が半分に減少することもそれだけの期間がかかるということだ。人体においては、ダイオキシンの半減期は、およそ7年半だ。


つまり、10年前でなくとも、ハットフィールド社が検査した一部の住人は、もっと高い濃度の毒素に曝露することが出来たのだ。(下につづく)Posted by Picasa

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