2009-11-13

目の前の犯罪に目をつぶること

今日は、フィラデルフィアを拠点とするデイヴ・リンドーフ記者がパブリック・レコード紙(10月15日付け)に書いた記事を訳しました。一部意訳してあります。非常に重要な視点・指摘が含まれています。私も勉強になりました。核兵器と同様に、人類最強のダイオキシンを含んだ枯れ葉剤、エージェント・オレンジは、奪命者である魔の働きをもっています。日本に実際撒布されていたら、今ののほほんとした平和など存在はしなかったでしょう。原爆が落とされた上に、枯れ葉剤が撒布されていたら、どうなっていたでしょうか。アメリカ軍部の戦争法律論で守られた感じの日本ですが、次の格好の目的地がベトナムだったのでしょうか。そして、その時、法律論で反対を唱える人はアメリカ軍部にいなかったのでしょうか。
そして、この記事に対して、先刻ご紹介した英越友好協会レン・アルディス事務局長の意見が載せられていますが、それは、後日掲載することにします。

『ヴェトナムのエージェント・オレンジ:目の前の犯罪を無視すること』 これが記事の見出しになっており、記事は以下です。
10月13日に、ニューヨークタイムズ紙は、『エージェント・オレンジ関連の疾病にさらに門戸を開く』と題した新しいニュースを掲載した。そして、それはインドシナ戦争(ベトナム戦争のこと)に従軍した多くのアメリカ復員軍人にとってよい知らせであることは確実だった。それは、アメリカ国防総省が致命的なダイオキシン入りの除草剤/枯葉剤を南ベトナムの広範囲の領土に撒布するのをやめて38年後に、すでに認められた13症状に、さらにパーキンソン病、虚血性心臓病、有毛細胞白血病という恐怖の3疾病も枯れ葉剤が原因だから追加してほしいという復員軍人の長い間の要求をアメリカ政府は認めたと、ニューヨーク・タイムズ紙は報告している。
新しい政策の下で、復員軍人省はまもなく、エージェント・オレンジへの暴露で発症した可能性のある210万人のヴェトナム戦争復員軍人に無料で治療を始めることになる。

これは、復員兵に直接の被害を引き起こし、しばしば第2世代第3世代にも被害を及ぼしてきたアメリカの政府の責任を国防総省と復員軍人省に認めさせるというベトナム戦争復員兵が10年20年にわたり長く苦闘してきたなかで、遅ればせながらの前進である。人に知られる最も有毒物質の1つであるダイオキシンは、多くの重い全身性疾患、自己免疫疾患、ガンと先天性欠損症を引き起こすことは、つとに知られている。このことは、爆弾、砲弾、銃弾に劣化ウランの使用が一般化しており、戦場に於ける有毒物の使用によって生ずる他の疾病への国防総省と政府の取り組みへの警告ともなっている。そしてそれは軍隊と一般人に対する健康被害への懸念不足、軍隊への情報非公開と最終的な被害者への病状手当ての否定などが、国防総省、政府の特徴となっている。)
タイ・ティ・ガーさん16歳

軍事問題担当のジェームズ・ダオ記者は、このまったく惨めな物語を通して政府が果たしてきた妨害者としての役割に言及したのだが、タイムズ記事の中で没になったのは、ベトナムにははるかに多いエージェント・オレンジの犠牲者の存在していることについて触れた部分だった。実際、有毒化学物質が、ベトナム人の頭に、そして大地にと落とされたわけだし、または、アメリカがしたことに対するいかなる責任でも認めることに対して米国政府はかたくなに拒絶してきたことをきじにしてあったのだった。

記事によると、復員軍人省は、エージェント・オレンジ関連疾患を持つ人は、20万人にも達する恐れがあると推測する。しかし、ベトナム人被害者の裁判によると、アメリカ復員軍人やその子ども達と同じ症状に苦しんでいるベトナム人は少なくとも300万人、あるいはおそらく480万人もの被害者がいるというが、この主張は根拠がないと、一連邦地裁判事は一蹴した。

ベトナム南部では、現在80万人ものベトナム人が。自身、またはその両親、あるいは祖父母のいずれかのエージェント・オレンジ曝露によって、慢性の健康障害問題で苦しんでいると推定されている。大部分のこれらの被害者のほとんどの人は、一部は発達遅滞がみられ、他には、歩行不能、手が使えなかったりしており、恒常的に世話を必要としている。

ヴェトナム戦争の元従軍兵を中心とした組織である『平和を求める復員軍人』は、アメリカが健康管理、教育、職業教育、恒常的な介護、在宅療養、ベトナムのダイオキシンの汚染地区を浄化する機材のための資金を提供する呼びかけた。この呼びかけを、議会とホワイトハウスは一貫して無視した。試験では、旧南ベトナムにあった元アメリカ軍3基地の周辺のダイオキシン・レベルは安全とされるレベルの3~400倍もあることが判明している。アメリカは、ベトナム軍がアメリカ軍基地に接近するために使っていらジャングルは枯らすために、基地周辺の何マイルにも多量のエージェント・オレンジを遺棄した。しかし、アメリカ軍の撤退時には、浄化作業は行われなかった。

元軍医や従軍後医師になった元兵士を含むアメリカ軍の復員軍人のある組織が、”ベトナム友好村事業アメリカ社”である。この事業が、エージェント・オレンジの被害者の剤の犠牲者を支援するために、ベトナムでの社会を確立するために資金を集める。

ガーさんは歌が上手だ

太平洋戦争突入の数年後に日本で一般市民を目標にしてアメリカが2つの原爆を投下したことを考えると、この行為は、感傷的な挑戦のように見えるかもしれない。しかし、第二次世界大戦に戻って、太平洋戦争中の最も凄惨な島潰し作戦の最中に、ペンタゴンのある法務官は、太平洋の日本諸島の日本人に対して除草剤を使用許可を求める軍の要請は、ハーグ議定書(現在のジュネーブ協定の前身)の下で違法であると裁定した。

法務官は、日本の軍への糧食を絶つために日本列島で一般人の糧食まで破壊する試みは、戦争犯罪であると採決した。日本軍はシベリアで軍の番犬を殺すためにストリキニーネを用いて戦時国際法をすでに破っていたので、それが違法であっても、アメリカは進軍する自由があると主張して、米国は進軍し、いずれにしろ除草剤を使用した。戦争のルールの下では、一方が規則を破れば、他方はもはやそれに束縛されない。

しかし、ベトコンも北ベトナム軍も、アメリカ軍と南ベトナム軍に対して有毒物質を一度も使用したことはなかった。そして、ヴェトナム戦争では、国防総省は、140万エーカー(ベトナムの総陸地面積の12%、旧南ベトナムのほぼ25%の領土)以上に強度の有毒物質を撒布することが戦争犯罪になるかどうかは、一度も考えなかった。

さらに言えば、国防総省は、大規模な枯れ葉剤作戦を開始する前に、エージェント・オレンジが致命的なダイオキシンが含まれていることを示す研究があることを承知していた。しかし、それらの研究をすっかり隠蔽していた。ダウケミカルとモンサントなどメーカーである化学会社の研究を隠蔽した。そして、毎日その物質を扱う軍隊や、あるいは濃密に撒布された地域で戦闘するために派遣された軍隊にさえ、警告したことは一度もなかった。
一国を丸裸にするためにアメリカ軍がエージェント・オレンジを犯罪的に使用したことに起因するヴェトナムで進行中の医学的災害は、ノーベル平和賞を授賞することになったオバマ大統領にとっては、格好の問題になるだろう。リチャード・ニクソン大統領は最終的に戦争終了後の和平会談で、ヴェトナムに数10億ドルの復興支援を提供する約束したが、ニクソンは大統領はすぐ約束を反故にした。オバマ大統領は、最終的には壊された約束を再生することで、自身の平和攻勢を開始することができるかもしれない。戦後、そのような復興援助は、1ドルも(ベトナムに)供与されたことがない。

訪日経験があるガーさん 日本の歌も
ダオ記者は言った。「新たな3つの疾病をエージェント・オレンジ関連と認定する軍人復員省の決定について、ベトナムのダイオキシン被害者への重要性に言及しなかった。なぜなら、”私の主眼は復員軍人だったから”、そして、もう一つは、この記事を800文字でまとめなければならなかったからだ」と。そのことは真実かもしれないが、ベトナム人(被害者)に1行触れる価値があったことは確かだ。しかし、遡ってタイムズ紙が、ダオ記者ではなく、ジェイニ―・ローバー記者名で、パーキンソン病、虚血性心疾患と白血病はエージェント・オレンジ関連疾患であるとする全米医学研究所の専門家会合での所見の記事を載せた7月25日にも、ベトナム人犠牲者には触れずじまいだった。軍人復員省の最近の決定は、それを基にしているものなのだ。この場合、それが新しい医学的発見についてであり、復員軍人の治療に関する政策決定ではないので、この過ちは単にジャーナリスト的に許しがたいものであった。
この点で、ニューヨークタイムズ紙がこの話題に関してジャーナリストとしての評判を救済できる唯一の方法は、ダオ記者、ローバー記者、あるいは他の記者に、アメリカが使用したエージェント・オレンジのヴェトナム人への影響について少しでも記事を書かせることにある。彼らは、『平和を求める復員軍人』または『ヴェトナム友好村事業アメリカ社』の復員軍人に電話をしてきじをかくことが出来たはずだ。
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オバマ大統領の今回の訪日で、結局広島、長崎の訪問は実現せず、任期中のいつかへと期待をつなぐ結果になった。
「ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ」の声に浴びせられるような、侵略した報いとの“因果応報論”は、ベトナム戦争にはない。ベトナムはアメリカを侵略していない。ベトナム戦争を終わらせるためだったとの“枯れ葉剤必要悪論”も、ベトナム戦争にはない。
ベトナムの多くの被害者の願いは、枯れ葉剤撒布の責任追及より、正義を認めてほしいという点に絞られて来ているようにも思う。だが、この厚い壁を乗り越えるには、猛毒ダイオキシンの使用を、生命次元から断罪する思想が不可欠である。
「世界には二つの力しかない、すなわち剣と精神とである」「ついには、剣は常に精神によって打ち破られる」との言葉を発したのはナポレオンであった。 
いま苦しさにあえいでいるベトナムの人々が存命のうちに、正義を認める道は、オバマ大統領の登場で微かではあるが、現実の期待となってきた。すべての原点は、人間にある。この大統領の時に・・という時期を好機に出来ないものか。(この項終わり)Posted by Picasa

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