2007-10-12

旅の感想(5)

若い人たちに学んだツアー 大釜 一男

私がヴェトナムツアーに参加させて頂くようになってから、早や10年が過ぎようとしています。アッと言う間の出来事のような気がします。ヴェトナム支援と言うより、日本にはもうとっくに失われた気のする人々の温かさ、相手を察する思いやり等、ヴェトナムから心の支援を頂いてきた年月の様な気がします。

毎回の事ですが、涙があふれ、心が洗われる、ツアーばかりでした。過去10年余の間で、今回ほど多彩なメンバーの参加はなかったように感じたのは私だけではないと思います。

ヴェトナムツアーでは、毎回の事ながらトラブルは付き物です。今回の参加メンバーは、ボランティア精神を発揮された方々で、どんなトラブルが起きても、文句は一切でないばかりか、いい経験が出来たと、笑い飛ばしてくださった心の大きい方々ばかり、総勢20名のツアーでした。感謝、感謝の日々でした。お1人お1人をご紹介したい位にユニークな方々ばかりでした。

その中で私の心を揺さぶったのはこの若い二人でした。高校3年生の伊藤啓太君と上崎理会子ちゃんです。

啓太君はとても積極的でした。通訳の人にヴェトナム語をあれこれ英語で聞いては自分で発音を確かめてもらい、OKが出るまで、何回も、何回も練習していました。

そして最後には我々の会を代表して、ヴェトナム語で挨拶をしてくれるまでになっていました。ひょっとして、挨拶をする気だったのかもと、私は思いました。 

それほど彼のベトナム語は流暢?でした。18歳とは思えない堂々たる挨拶に、私は舌を巻きました。こんな青年に、最近私はお目にかかったことが無かったからです。未来、楽しかるべしです。

もう1人は理会子ちゃん。

小柄でいかにもひ弱そうに見えます。食事も細く、大丈夫かな?内心、心配してそっと見守っていました。そんな彼女が、何とかダンス競技で高校日本一と国際大会の栄冠を両方勝ち取ったと伺った時は、わが耳を疑いました。何処にそんな力を持っているのだろうか?と。

われわれが過去3~4回家庭訪問している所があります。今回も訪問してその家庭を支援する事になっていました。その家の状況を前知識としてどなたかに理会子ちゃんは聞いていたのです。

われわれは、お母さんと二人の姉妹に、毎年古着とかお金とかと、又元気で頑張るように激励など支援をさせていただいてきました。

今は親子三人暮らし。働き手は母親のみ、父親は枯れ葉剤の影響で死亡。その母親も、重い病気にかかっている下の子(ニヤンちゃん)を置いて働きにはいけない極貧の家庭です。

姉は高校生。ニャンちやんにはお兄ちゃんがいましたが、やはり昨年ニャンちゃんと同じ病気(枯れ葉剤の影響)で亡くなりました。ニャンちゃんも、もう長くは生きられない状態です、体も小さく黄胆症状が出て、お腹は病気の為コチコチです。話しかけてもあまり話はしません。殆んど黙って座っている方が多い子でした。笑った顔など、私は見たことがありませんでした。

そんな姉妹に「髪を結ってあげたいのですが、二人に聞いてください」との事で、二人に話をして、ニャンちゃんからさきに理会子ちゃんはかわいらしく三つあみに結っていきました。

じっと微笑みながらニャンちゃんを見ている姉、結い終わった髪を小さなカガミに写して見せてあげました。笑み一杯のニャンちゃん。こんな何でもない風景、、、、私の胸にこみ上げるものがありました。涙がこみ上げてきました。皆な笑顔で拍手、拍手、、、、、。

今度はお姉さんの番です。ニャンちゃんは理会子ちゃんの手さきと姉の髪の毛を食い入るように見ていました。

お姉さんの髪型が段々出来上がっていきます。ニャンちゃんの顔が、ニコニコし、とても嬉しそうな表情になり、顔は赤みさえ射したように感じました。

今までこんな笑顔を、われわれに見せてくれたことは一度もありませんでした。すばらしい笑顔に会えたことに感激しました。

理会子ちゃんが二人にプレゼントしたのは、小さな造花のついた四個の輪ゴム。買えば2~30円くらいだと思います。私にはとても嬉しさがこみあげてきました。又同時に、この子たちの心の内を判ってあげていなかったことに対し凄くシヨックを受けました。

私は65年近く生きてきました。しかし1人の子供の心さえ読み取ってあげることさえ出来なかった自分・・・・・。


〔心こそ大切なれ〕との哲人の言葉が、私の脳を突き刺しました。自分の押し付けではなく、何事においても相手の目線、心に立っていくことがいかに大切なことか、身に染みたヴェトナムツアーでした。

また、若い人に大いに学ぶことの多きことかと思い知らされた旅でもありました。啓太君、理会子ちゃんほんとうに有難う。
今回くらいハプニング連続の旅も珍しかったと思います。車は故障するは、あるホテルの予約は不完全、バスに荷物は十分に積めないは等。

[何も無い人生なんてない。何も無ければ人生つまらない]

そう思いながら、来年のツアーを楽しみにしている私です。
(筆者:左の写真の中央の男性)

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