2007-09-07

タイビン省 その9

8月23日 最後の自宅訪問は、チャン・ゴック・トアイさのお宅だった。

汗だくで、贈呈した補聴器を調整するベトナム外務省のタインさん。 呼びかけは通じていた。トアイさんの表情がだんだんと輝いてきた。

村の先生をしていたその風格は、このお姿に残る。

実は、こういう仕事をしていると、早くやめようと言う人が必ずどこかにいる。
私は怒るのだ。物を差し上げるだけなら、来る必要はない。誰かに託せばいい。そういう顔の見えない援助は、政府のやる仕事だ。差し上げる方も、戦争の苦労やその後の生活の大変さを分かって差し上げるのと、受け取る方も、遠いところから来て、どのくらい熱心にやってくれるかを分かった後でもらうのとは、結果は絶対違うと私は思っている。

この日、始まる前に、トアイさんが疲れているので早くやめて帰りましょうという話がきた。「分かりました、お会いしてから判断します」と、私は言った。

家内の話からも、1時間くらいなら十分耐えられるとの確信を掴んだ。タインさんが付けてくれた補聴器が引き出した元気を借りて、車椅子で出かけてもらった。ますます意欲が出てきた。表通り・・といっても、タイビン省の田舎だ。木の陰が落ちた道を100メートルそこそこ快適そうに移動した。

この写真が私は好きだ。トアイさんと新谷さんが手を握りあって、まるでベトナム語で会話しているように見える。品物を託したなら、この出会いは無かった。国境無き支援の一例だ。

トアイさんは、軍隊への入隊年を思い出せなかった。ただ、クアンチ省のカムローで3年間戦ったという。

2006年8月1日に左半身不随となり、タイビン省のブルガリア友好病院に1ヶ月半入院した。現在も月に1回通院している。今は、ほとんど話せない。

左は、衣類を奥さんのニエンさんに贈呈する櫻井智子さん。櫻井さんは、いつもしっかりとメモをとっている。こういうツアーは、しっかりとメモをとっておかないと後で必ず混乱する。私は、いつも感心してみているのだ。

トアイさんは、1951年に結婚。今年結婚生活56年の年輪を刻む。

半身不随になったトアイさんの面倒を見るのは、甥のチャン・ミン・ドゥオンさん。42歳だ。上の写真で、車椅子を押してくれている方だ。仕事は農業で、季節的に建設労働者賭して働きに出る。

この記念撮影の後、皆は引き上げた。残った数人に、トアイさんは、手を振るまでになった。動く右手に、トアイさんのすべての気持ちが込められていた。

そこを見届けるまでが、この仕事である。

トアイさん!老後はこれからです。79歳は青春。『ベトナム老人はなぜ元気なのか』(草思社 皆川一夫訳)で、70歳以上は永遠に若い・・とある。

79歳を家の中にしまい込みたくない、と思うのは、私たちだけだろうか。Posted by Picasa

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